輸出業者?であれば課税事業者選択をしましょう

輸出業者?であれば課税事業者選択をしましょう

Yoshio Yamaguchi

通常、消費税においては課税事業者よりも免税事業者である方が、国に納付する消費税額が少なく計算され有利です。しかし例外があり、それは輸出事業者の場合です。輸出事業者は課税事業者になる方が有利である、ということの意味を、消費税計算の仕組みから解説いたします。

課税事業者とは

消費税の確定申告によって消費税が還付されるのは、課税事業者のみです。免税事業者は消費税の確定申告をする義務がないため、消費税の還付もありません。 課税事業者とは、消費税申告書を提出して、国に対して消費税を納付する義務、又は還付請求する権利がある者です。

免税事業者とは、消費税申告をする義務がない(できない)者で、消費税を納付する義務もなく還付請求する権利もない者です。

下記のいずれかに該当する場合は、基本的には 課税事業者に該当します。 

1.2期前の事業年度の売上高が10百万円超(ここでの売上高には輸出売上も含まれます)→課税事業者 

2.前年度の期首から6か月間の売上高が10百万円超、且つその期間の給与支払額が10百万円超→課税事業者 

3.開業したばかりで2年前及び前年の売上高がない場合で、資本金が10百万円以上→課税事業者

正確なところは国税庁の「No.6501 納税義務の免除」が参考になりますので、併せてご覧ください。

消費税の計算の仕組み

次に、下記における消費税の計算の仕組みを見ていきましょう。

・課税事業者の場合
・通常の免税事業者の場合
・輸出事業者が課税事業者の場合
・輸出事業者が免税事業者の場合

通常の課税事業者の場合

国に納付すべき消費税、又は還付すべき消費税は次のようにして計算されます。 

売上代金に含まれている消費税 − 仕入代金に含まれている消費税。

これがプラスであれば納付、マイナスであれば還付を受けます。

例えば、ある課税事業者が660の支払価格で仕入れたものを販売価格1,100で販売するとき、仕入価格には消費税60が、販売価格には消費税100が含まれているとみなされることが特徴です。

1100(100) - 660(60) = 440(40) ( )内は消費税

この課税事業者の手元にはプラス440が残りますが、そのうち40は消費税です。

事業者は消費税の確定申告をしてこの40を国に納付し、最終的な残りは400になります。

通常の免税事業者の場合

免税事業者の場合には、同じく660での支払価格で仕入れたものを1,100で販売するとき、仕入価格には消費税60が、販売価格には消費税100が含まれていることになります。

1100(100) - 660(60) = 440(40) ( )内は消費税

この課税事業者の手元にはプラス440が残りますが、そのうち40は消費税です。

免税事業者は消費税の確定申告を免除されているため、この40の消費税部分を自分のものとします。これを「益税」といいます。最終的な残りは440です。課税事業者よりも免税事業者の方が益税の40だけメリットがあります。

以上が消費税の基本的な計算の仕組みです。

輸出事業者が課税事業者の場合

輸出取引の場合には計算が違ってきます。輸出による売上は「免税売上」とされており、その売上代金には消費税を上乗せしないことになっています(消費税法7条1項第1号)。1,100の販売価格で販売をした場合、販売者は消費税を預かっていない、つまりそこに含まれている消費税はゼロとみなされます。

1,100(0)-660(60) = 440 (△60)

課税事業者であれば、消費税の確定申告をして、60の還付を受けることが可能です。。最終的な手取りは500になります。

輸出事業者が免税事業者の場合

1,100(0)-660(60)=440(△60)

輸出による売上は免税売上であるため、消費税は預かっていないことになります。計算式は課税事業者と免税事業者で異なりません。しかし、免税事業者の場合には、消費税の確定申告をできないため、60の還付請求をすることができません。そのため、最終的な手取りは440であり、課税事業者の場合に比べて少なくなります。

注意すべきは、輸出売上以外の国内売上がある場合、確定申告によって納付のポジションになる可能性があります。

仮に輸出売上が220(0)、国内売上が880(80)である場合、

1,100(80)-660(60) = 440(20)   

確定申告によって20を納税することになるため、最終的な手取りは420となり、免税事業者の時よりも手取りが少なくなります。


販売価格

仕入価格

差引

手取り

通常の課税事業者

1,100(100)

660(60)

440(40)

400

通常の免税事業者

1,100(100)

660(60)

440(40)

440

輸出事業者である課税事業者

1,100(0)

660(60)

440(△60)

500

輸出事業者である免税事業者

1,100(0)

660(60)

440(△60)

440


免税事業者が課税事業者となるための手続き

上に述べたように、原則的には、2事業年度前の売上高が10百万円超であるといった要件を満たさない限りは課税事業者ではありません。しかし、免税事業者が自らの選択によって課税事業者になる方法が2つあります。

適格請求書発行事業者

適格請求書発行事業者になれば、自動的に課税事業者になります。

2024年10月現在、適格請求書発行事業者の登録申請をしてから登録を受けるまでの期間は、おおよそ1ヶ月〜1.5ヶ月ほどです。

登録を受けた日の取引から、消費税確定申告の対象となります。

輸出先の国外のお客様は日本の消費税制度とは関係ないため、輸出事業者は適格請求書を発行する必要はないとされています。しかし、課税事業者に転換する方法として、適格請求書発行事業者になるということです。

課税事業者選択届出書

「課税事業者選択届出書」を提出すれば、課税事業者になることができます。 「課税事業者選択届出書」を提出した場合、提出をした期の翌期から課税事業者となります。

最後に

一般的には、益税がある免税事業者の方が課税事業者よりもメリットがあります。しかし、売上のうち大部分が輸出取引であるような事業者の場合には、消費税の還付請求ができるため、課税事業者の方がメリットがあります。但し、売上の中に輸出取引と国内取引の両方がある場合には、シュミレーションを行って課税事業者と免税事業者のどちらが有利かを検討しましょう。

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